久々のブログ更新です。
2.5ヶ月という長い時間を使って行っていた
薬学部学生の長期薬局実務実習が本日をもって終了いたします。
学生さん、職場の皆さん、お疲れさまでした。
受入れ前は2.5ヶ月はとんでもなく長い時間だと考えていたのですが、
実際の感覚としてはちょうどいい時間に感じました。
モデルコアカリキュラムも
ゆったりとした時間の中で落ち着いて処理する事が出来ましたし、
何よりも、薬剤師として、人としての「心」を伝える時間を多くとることができました。
今回、受入れた学生さんは、素直でいい子たちでした。
指導薬剤師としては、なかなか内面的な変化を見いだす事が難しいのですが、
本人たちの話では考え方等が相当変わったようです。
現場で仕事をしている私たちからいろんな事を学んでいただいたようで
私たちとしても、学生実習を受入れた甲斐があったかなと思います。
さて、この実習期間中は他の学生も薬局実習に行っていたのですが、
薬局によってコアカリキュラム以外の実習は様々で、
その薬局の特色が出ると思います。
受入れ薬局側の実習方法、内容によっては
学生の気持ちが乗ったり乗らなかったりする事もあるでしょう。
今回の長期実習で今後のために改善すべき内容を
学生に聞いてみた所、何点かありました。
また、他の薬局に実習に行っていた学生たちにも
意見を募集して見ました。その内容は、
【薬局長期実習における学生側からの意見】
・勉強会に参加できた事はいい経験だったが、
夜遅くなる事があったので疲れた。
・薬局業務が忙しく、その間を埋めるペーパーワークが多過ぎた
・一カ所でずーっと実習するのでなく
他の薬局にも見学などに行ってみたかった。
・やたらに雑用が多かった。
・実習の後半になるとやる事が無くなった。
・働いている薬剤師さんが多く、
いろいろな意見が聞けて良かった。
とりあえず以上です。
これらを踏まえて今後の改善をしていきたいと思います。
ところで、今回の実習でいろいろ考えた事があります。
それは、学生の漏らした本音がきっかけなのですが、
「大学はクソだ」
というものです。
このひと言で自分自身、昔を思い出しました。
僕自身、大学はクソだと思っていましたので。
今回の学生さんたちの年齢は僕よりおよそ10歳年下です。
にも拘らず薬学部というものは相変わらず「クソ」のようです。
なぜ「クソ」なのか?
高校生の時、いろいろ人生を悩み、
それなりに自分で考えて薬学部に入学しました。
その進路決定が本意でも、そうでなくても、
薬学というものを学び、薬剤師になれば、
それなりに医療の場で活躍できると感じていました。
しかし、現実には期待していた程でもないという事が
学年を重ねるごとに判明し、ましてや在学中は臨床に関する学問などほぼ皆無。
「病気をみるな、患者をみろ」
という医療の根本に沿わない教育内容。
製薬企業に就職を目指すも、学内でやっている化学は
所詮理学部有機系の足元にも及ばない。
何もかもが広く浅く中途半端。
医療の現場で患者さんを相手にして行きたいと考えていた学生にとっては
純粋に化学的な卒論研究などしたくもない。
そんな時間があるなら国家試験の勉強をやりたい。
確実に1発で合格できるようにしたい。
学内の狭い社会で長い年月同じ人間関係のまま
なーなーの教職員たち。
社会に出て必要な事は何?
人として必要な考え方とは?
人生とは何?
仕事とは何?
そんな疑問を一切解決できないまま
薬学生は進級して行きます。
「最高学府である大学がこの程度か!」
そんな思いを持ったまま学生たちは実習に来たと。
僕自身、現役当時はそういった考えを持っていました。
では、このような考えを持った学生たちに
現場の薬剤師は一体何を伝えるべきでしょうか。
日薬や省庁が策定したモデルコアカリキュラムだけでしょうか?
それだけで人間として伝えるべき事を補っているでしょうか?
僕は違うと思います。
大切な事、それは「心」伝える事ではないでしょうか。
自分らしく人生を送るため。
人生の中で大切な事。
これから社会に出て必要な事。
仕事に対する考え方。
人を好きになる事。
共に生きるという事。
死ぬという事。
これから人生を歩む上で、
きっと出くわす様々な出来事について
どんな心構えでいればいればいいのかを
学生たち、後輩たちは知りたいのだと思います。
そしてこれらを自身の経験から
後世に伝えるのが先達としての役割です。
そして、伝えた後世が自分たちと同じ年代になった時に
自分たちよりも立派に次の後世に伝える事が出来るようにするのです。
若者はいつか自分を超えて行く存在なのです。
その自分を超えて行くのを如何に早く達成させるかが重要なのです。
そのためには自分自身に、
絶対的な生きる自信
理想を追求する揺るぎない志
次の世代を育て温かい眼差しで見守る大きな心
が必要になってきます。
これらを持ち合わせた上で指導して行かねば
学生は心を奮い立たせることなく、開眼せぬままに実習を終えてしまいます。
現場実習は「クソ薬学部」にいる学生を救う最後の砦です。
閉塞的な環境と狭い視野から脱出させる加速器なのです。
そして、切に願うのは、
現場薬剤師がある程度の年数を経て教育の場に戻る事です。
正直、研究畑の人間に現場教育や人間教育をするのには無理が有ります。
生身の患者さんという人間を相手にして試行錯誤し、
社会的な薬剤師の役割を明確に自覚した人間でなければ務まりません。
薬学部教育の弊害というだけにとどまらず、
日本の教育機関不全、ひいては親が子どもに教えるべき事を見失っている
現代において、本当に必要な教育というものは
「人を育てる」
ということではないでしょうか。
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